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財産開示手続に関する最高裁決定


財産開示手続に関する最高裁決定を紹介します。

最高裁令和4年10月6日決定

 財産開示手続実施の申立てを行った後に、債務名義に表示された請求債権の弁済が行われた場合に、財産開示手続の要件を充足するか?が問題になりました。

事案の概要

 XとYは、平成28年12月、執行力のある債務名義である養育費支払等契約公正証書により、Yが支払義務を負う両者の間の子の監護費用に関する合意をし、離婚した。

 Xは、令和3年2月、本件執行証書について執行文の付与を受け、本件執行証書及び当該執行文の謄本がYに送達された。

 Xは、令和3年6月、本件執行証書に表示された子の監護費用に係る確定期限の定めのある金銭債権を請求債権として、本件申立てをした。

 原々審は、令和3年7月、本件申立ては理由があるとして、Yについて、財産開示手続の実施決定(原々決定)をした。

 その後、Yは、原々決定に対し、執行抗告をした上で、Xに対し、前記請求債権のうち確定期限が到来しているもの(本件債権)について弁済をした。

原審の判断

 原審は、本件債権が弁済によって消滅したとして、財産開示申立てを却下しました。

 債務名義の正本に表示された金銭債権である請求債権が弁済によって消滅した場合には、もはや法197条1項2号に該当する事由があるとはいえなくなるから、当該事由の有無の判断において請求債権に対する弁済の事実を考慮することができないと解すべき根拠はない。また、財産開示手続に強制執行及び担保権の実行に関する規定を準用する法203条は、請求異議の訴えについて規定する法35条を準用していないから、上記事由があるとしてされた財産開示手続の実施決定に対する執行抗告において、債務者が請求債権の不存在又は消滅を主張することを許さない趣旨であるとは解されない。したがって、上記執行抗告においては、請求債権の不存在又は消滅を執行抗告の理由とすることができると解すべきである。

最高裁の判断

 最高裁は、以下のように、原審の判断を覆しました。

 法には、実体上の事由に基づいて強制執行の不許を求めるための手続として、請求異議の訴えが設けられているところ、請求債権の存否は請求異議の訴えによって判断されるべきものであって、執行裁判所が強制執行の手続においてその存否を考慮することは予定されておらず、このことは、強制執行の準備として行われる財産開示手続においても異ならないというべきである。そのため、執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者から法197条1項2号に該当する事由があるとして財産開示手続の実施を求める申立てがあった場合には、執行裁判所は、請求債権の存否について考慮することなく、これが存するものとして当該事由の有無を判断すべきである。そして、債務者は、請求異議の訴え又は請求異議の訴えに係る執行停止の裁判の手続において請求債権の不存在又は消滅を主張し、法39条1項1号、7号等に掲げる文書を執行裁判所に提出することにより、財産開示手続の停止又は取消しを求めることができるのであり(法203条において準用する法39条1項及び40条1項)、法203条が法35条を準用していないことは、上記事由があるとしてされた財産開示手続の実施決定に対する執行抗告において、債務者が請求債権の不存在又は消滅を主張することができる根拠となるものではない。

 したがって、法197条1項2号に該当する事由があるとしてされた財産開示手続の実施決定に対する執行抗告においては、請求債権の不存在又は消滅を執行抗告の理由とすることはできないと解するのが相当である。


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