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同一労働同一賃金に関する最高裁判決④


原審の判断

 原審は,通算雇用期間が5年を超える場合,契約社員と正社員の年末年始勤務手当の支給に関する労働条件の相違は,労働契約法旧20条の不合理に当たると判断しました。一方で,扶養手当については,労働契約法旧20条の不合理とはいえないと判断しました。

 第1審被告における年末年始勤務手当は,年末年始の時期に業務に従事しなければならない正社員の労苦に報いる趣旨で支給されるものであるところ,本件契約社員が原則として短期雇用を前提とすること等からすると,正社員に対して年末年始勤務手当を支給する一方で,本件契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,直ちに労働契約法20条にいう不合理と認められるものには当たらない。もっとも,本件契約社員であっても,通算雇用期間が5年を超える場合には,正社員との間に年末年始勤務手当に係る労働条件の相違を設ける根拠は薄弱なものとならざるを得ず,上記相違は,同条にいう不合理と認められるものに当たる。

 第1審被告において,正社員に対して年始期間の勤務に対する祝日給を支給する一方で,本件契約社員に対してこれに対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違は,年始期間につき正社員に対してのみ与えられる特別休暇についての相違を反映したものであるところ,長期雇用を前提とする正社員と,原則として短期雇用を前提とする本件契約社員との間で,休暇等について異なる制度や運用を採用することには一定の合理性があるから,上記特別休暇についての相違が直ちに労働契約法20条にいう不合理と認められるものには当たらず,これを反映した上記祝日給についての相違も,同条にいう不合理と認められるものには当たらない。もっとも,本件契約社員であっても,通算雇用期間が5年を超える場合には,上記相違を設ける根拠は薄弱なものとならざるを得ず,上記相違は,同条にいう不合理と認められるものに当たる。

 第1審被告における扶養手当は,長期雇用を前提として基本給を補完する生活手当としての性質及び趣旨を有するものであるところ,本件契約社員が原則として短期雇用を前提とすること等からすると,正社員に対して扶養手当を支給する一方で,本件契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たらない。

最高裁の判断

 最高裁は,年末年始勤務手当・年始期間の勤務に対する祝日給・扶養手当のいずれも,正社員に対してのみ支給するのは,労働契約法旧20条の不合理に当たると判断しました。

年末年始勤務手当について

 第1審被告における年末年始勤務手当は,郵便の業務を担当する正社員の給与を構成する特殊勤務手当の一つであり,12月29日から翌年1月3日までの間において実際に勤務したときに支給されるものであることからすると,同業務についての最繁忙期であり,多くの労働者が休日として過ごしている上記の期間において,同業務に従事したことに対し,その勤務の特殊性から基本給に加えて支給される対価としての性質を有するものであるといえる。また,年末年始勤務手当は,正社員が従事した業務の内容やその難度等に関わらず,所定の期間において実際に勤務したこと自体を支給要件とするものであり,その支給金額も,実際に勤務した時期と時間に応じて一律である。

 上記のような年末年始勤務手当の性質や支給要件及び支給金額に照らせば,これを支給することとした趣旨は,本件契約社員にも妥当するものである。そうすると,郵便の業務を担当する正社員と本件契約社員との間に労働契約法20条所定の職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があること等を考慮しても,両者の間に年末年始勤務手当に係る労働条件の相違があることは,不合理であると評価することができるものといえる。

 したがって,郵便の業務を担当する正社員に対して年末年始勤務手当を支給する一方で,本件契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。

年始期間の勤務に対する祝日給について

 第1審被告における祝日給は,祝日のほか,年始期間の勤務に対しても支給されるものである。年始期間については,郵便の業務を担当する正社員に対して特別休暇が与えられており,これは,多くの労働者にとって年始期間が休日とされているという慣行に沿った休暇を設けるという目的によるものであると解される。これに対し,本件契約社員に対しては,年始期間についての特別休暇は与えられず,年始期間の勤務に対しても,正社員に支給される祝日給に対応する祝日割増賃金は支給されない。そうすると,年始期間の勤務に対する祝日給は,特別休暇が与えられることとされているにもかかわらず最繁忙期であるために年始期間に勤務したことについて,その代償として,通常の勤務に対する賃金に所定の割増しをしたものを支給することとされたものと解され,郵便の業務を担当する正社員と本件契約社員との間の祝日給及びこれに対応する祝日割増賃金に係る上記の労働条件の相違は,上記特別休暇に係る労働条件の相違を反映したものと考えられる。

 しかしながら,本件契約社員は,契約期間が6か月以内又は1年以内とされており,第1審原告らのように有期労働契約の更新を繰り返して勤務する者も存するなど,繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく,業務の繁閑に関わらない勤務が見込まれている。そうすると,最繁忙期における労働力の確保の観点から,本件契約社員に対して上記特別休暇を付与しないこと自体には理由があるということはできるものの,年始期間における勤務の代償として祝日給を支給する趣旨は,本件契約社員にも妥当するというべきである。そうすると,郵便の業務を担当する正社員と本件契約社員との間に労働契約法20条所定の職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があること等を考慮しても,上記祝日給を正社員に支給する一方で本件契約社員にはこれに対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違があることは,不合理であると評価することができるものといえる。

 したがって,郵便の業務を担当する正社員に対して年始期間の勤務に対する祝日給を支給する一方で,本件契約社員に対してこれに対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。

扶養手当について

 第1審被告において,郵便の業務を担当する正社員に対して扶養手当が支給されているのは,上記正社員が長期にわたり継続して勤務することが期待されることから,その生活保障や福利厚生を図り,扶養親族のある者の生活設計等を容易にさせることを通じて,その継続的な雇用を確保するという目的によるものと考えられる。このように,継続的な勤務が見込まれる労働者に扶養手当を支給するものとすることは,使用者の経営判断として尊重し得るものと解される。もっとも,上記目的に照らせば,本件契約社員についても,扶養親族があり,かつ,相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば,扶養手当を支給することとした趣旨は妥当するというべきである。そして,第1審被告においては,本件契約社員は,契約期間が6か月以内又は1年以内とされており,第1審原告らのように有期労働契約の更新を繰り返して勤務する者が存するなど,相応に継続的な勤務が見込まれているといえる。そうすると,上記正社員と本件契約社員との間に労働契約法20条所定の職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があること等を考慮しても,両者の間に扶養手当に係る労働条件の相違があることは,不合理であると評価することができるものというべきである。

 したがって,郵便の業務を担当する正社員に対して扶養手当を支給する一方で,本件契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。

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