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退職金の同一労働同一賃金に関する基本的な考え方


退職金について、同一労働同一賃金の基本的な考え方を取上げます。

退職金の同一労働同一賃金の基本的な考え方

 同一労働同一賃金ガイドラインは、退職金について記載していません。しかし、退職金についても、他の待遇と同様、正社員の退職金の性質・目的に応じて、非正規労働者に対して、均等又は均衡に支給がされていることが重要です。

 退職金の性質・目的は、具体的な計算方法や支給方法によって客観的に決まります。たとえば、正社員の退職金が、勤続年数・退職事由・退職時の基本給等に応じて支給額が決まる場合、退職金は、勤続期間に応じた賃金の後払的性格と報償的性格を併せ持っています。したがって、非正規労働者に対しても勤続年数や功労の度合いに応じて退職金を支給することが求められます。

最高裁の考え方

 メトロコマース事件最高裁判決は、労働契約法旧20条下で、正社員と非正規労働者間の退職金の相違が不合理と判断される場合はあり得ると一般論を述べています。

 その上で、本件の退職金が、労務対価の後払い、功労報償等の複合的な性質、正社員の人材確保・定着を図るという目的を踏まえ、正社員と契約社員の職務内容、配置変更範囲の相違、職務内容等が異なる多数の正社員が存在すること、正社員への登用制度等を考慮し、契約社員への退職金の不支給を不合理ではないと判断しました。

 賞与と同様、最高裁が、人材育成の確保・定着を図る目的を重視していることが注目されます(同一労働同一賃金に関する最高裁判決参照)。

 もっとも、最高裁は、契約社員に対しては、常に退職金を支給しなくていいと言っているわけではありません。宇賀判事は、継続的勤務に対する功労報償という退職金の性質は、長期間にわたり勤務する契約社員に当てはまるので、正社員と退職金の有無に関する相違は不合理だとする反対意見を述べています。

退職金の同一労働同一賃金をめぐる実務上の動き

 非正規労働者に対しては、企業型確定拠出型年金(DC)や個人型確定拠出年(iDeCo、iDeCo+)として退職金を制度化する動きがあります。

 また、会社によっては、派遣労働者の労使協定方式を参考にして、非正規労働者の退職金を決めるという動きもあります。

 労使協定方式では、退職金について、以下の3つの内、どれかを労使で話合い採用することを求めています。

労使協定方式で採用する退職金制度

①最低勤続年数(3年)で、勤続年数ごとの支給月数を満たした退職金制度の導入

②賃金に退職金に相当する分(6%)を上乗せして支給する

③中小規模退職金共済制度に給与の6%以上の掛金で加入する

 一方で、正社員の退職金を廃止し、毎月の基本給に上乗せして支給するという動きもあります。これには、企業会計上、退職金債務を計上しなくていいという会計上のメリットもあります。同一労働同一賃金の関係では、非正規労働者に対して、退職金を支給する必要はなくなります。ただし、この場合、正社員と非正規労働者の基本給の相違が均等又は均衡か?という問題になります(基本給の同一労働同一賃金に関する基本的な考え方同②同③参照)。


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