個人情報取扱事業者であっても、個人情報保護法の適用が除外される場合があります。
個人情報保護法の適用除外
個人情報取扱事業者であっても一定の場合は、個人情報保護法が定める義務等の適用が除外されます。適用が除外されるのは、以下の5つの目的で、個人情報又は匿名加工情報を取り扱う場合です。
個人情報保護法の適用が除外される場合
(1)報道機関が報道活動の用に供する目的
(2)著述を業とする者が著述の用に供する目的
(3)学術研究機関等が学術研究活動の用に供する目的
(4)宗教団体が宗教活動の用に供する目的
(5)政治団体が政治活動の用に供する目的
(適用除外)
第五十七条 個人情報取扱事業者等及び個人関連情報取扱事業者のうち次の各号に掲げる者については、その個人情報等及び個人関連情報を取り扱う目的の全部又は一部がそれぞれ当該各号に規定する目的であるときは、この章の規定は、適用しない。
一 放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関(報道を業として行う個人を含む。) 報道の用に供する目的
二 著述を業として行う者 著述の用に供する目的
三 宗教団体 宗教活動(これに付随する活動を含む。)の用に供する目的
四 政治団体 政治活動(これに付随する活動を含む。)の用に供する目的
2 前項第一号に規定する「報道」とは、不特定かつ多数の者に対して客観的事実を事実として知らせること(これに基づいて意見又は見解を述べることを含む。)をいう。
3 第一項各号に掲げる個人情報取扱事業者等は、個人データ、仮名加工情報又は匿名加工情報の安全管理のために必要かつ適切な措置、個人情報等の取扱いに関する苦情の処理その他の個人情報等の適正な取扱いを確保するために必要な措置を自ら講じ、かつ、当該措置の内容を公表するよう努めなければならない。
個人情報を取り扱う目的の全部又は一部
たとえば、報道機関が個人情報を取り扱う場合、報道目的とそれ以外の目的が混在していることが多いと想定されます。混在していても、報道目的が一部でも含まれる場合は、適用が除外されます。
当該各号に規定する目的であるとき
適用除外について規定している76条は、主体と目的の二重の要件で適用除外を規定しています。たとえば、報道機関がまったく報道目的を含まずに、個人情報を取り扱う場合は、適用除外にする必要がないからです。
報道機関
報道機関とは、報道を業として行う者のことです。放送機関や新聞社、通信社は、報道機関の例示にすぎません。
報道を業として行う個人を含むとわざわざ規定しており、フリージャーナリスト等の個人事業主が、報道機関に含まれることを明確にしています。
報道の用に供する目的
報道については、2項に定義規定があります。報道の用に供する目的で行われる個人情報等の取扱いには、取材、記録管理、加工、分析、編集、制作、論評等への利用、その他刊行・放送等に至る一連の活動のすべてが含まれます。
著述を業として行う者
著述とは、小説・詩・論文・論評等のジャンルを問わず、知的活動による創作的な要素を含んだ内容を言語を用いて表現することをいいます。
著述を業として行う者には、個人・法人を問わず複数の者によって共同又は分担して行われる場合も含まれます。
著述の用に供する目的とは、取材・編集・校正・印刷・製本・刊行に至る一連の活動全般が含まれます。
大学その他の学術研究を目的とする機関
大学その他の学術研究を目的とする機関、団体とは、私立大学、民間研究所等の学術研究を目的として活動する機関や学会等の団体をいいます。
民間企業に所属する者であっても、学会の会員として研究発表する目的で個人情報を取り扱う場合は、本号の対象になります。
しかし、研究機関や学会等に所属していない個人による学術研究活動は、本号の対象外です。したがって、個人情報保護法の適用除外とはなりません。
宗教団体
宗教団体とは,宗教法人法2条の宗教団体と同義と解されています。学術研究活動と同様,個人による宗教活動は,本号の対象外で,個人情報保護法の適用除外とはなりません。
政治団体
政治団体とは,政治資金規正法3条の政治団体をいいます。もっとも,政治資金規正法上の届出の有無は問いません。