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忘れられる権利


忘れられる権利に言及するのか?が注目された事件の最高裁判決が出ましたので、紹介します。

忘れられる権利とは?

 忘れられる権利は、EUデータ保護規則17条に「right to erasure right to be forgotten」として規定されています。規則案の段階で「right to be forgotten」と表記されていたので、訳して、忘れられる権利と呼ばれています。

 権利の中身は、個人が企業等に収集した個人情報の消去を求めることができる権利です。2014年5月、EU司法裁判所が、Googleに対し、個人名の検索結果から個人の過去の事実を報じるサイトへのリンクの削除を命じる判決を言い渡しました。

 EU司法裁判所が、判決の中で、忘れられる権利という文言を用いたことで、司法裁判所が、この権利を認めたと言われています。

日本の状況

 さいたま地裁平成27年6月25日決定に対する保全異議申立事件である同地裁平成27年12月22日決定(判例時報2282号78頁)が、社会から忘れられる権利を有するというべきであると言及しています。

 もっとも、日本では、人格権に基づいて削除請求権を構成することができるので、あえて忘れられる権利を持ち出す必要はないと考えられています。

 上記、さいたま地裁の保全抗告事件である東京高裁平成28年7月12日決定は、名誉権・プライバシー権に基づく差止請求と異ならないと判示しています。

最高裁は?

 最高裁が2017年1月31日に判断をしています。上記東京高裁の許可抗告事件です。

 まず、忘れられる権利については、最高裁は、言及していません。

 検索結果の削除については、プログラムにより自動的に行われるにしても、そのプログラムが、検索事業者の方針に従った結果が得ることができるように作成されているので、検索結果の提供は事業者の表現行為の面があるとして、削除請求の対象になると判断しています。

 検索結果の提供は、ネット上に情報を発信したり、ネット上の膨大な情報の中から必要なものを入手することを支援するもので、現代社会においてネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たしていると、その意義に言及しています。

 検索結果を削除することは、表現行為の制約でもあるとともに、現代社会におけるネット上の情報流通の基盤としての役割の制約でもあるということができます。

 したがって、事実の性質や内容、URL等情報が提供されることでプライバシーに属する事実が伝達される範囲とそれにより被る具体的被害の程度、社会的地位・影響力、記事等の目的・意義、記事等が掲載された当時の社会状況とその後の変化、記事等においてその事実を記載する必要性など、事実を公表されない法的利益と検索結果を提供する理由に関する諸事情を考慮し、事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合は、検索結果の削除を求めることができると判断しています。

 一連の裁判では、児童買春・児童ポルノ処罰法違反で逮捕・有罪判決を受けたことを報じるURLの検索結果の削除を求めていました。

 児童買春が児童に対する性的搾取・性的虐待と位置付けれて社会的に強い非難の対象であり、公共の利害に関する事項に当たる、プライバシー侵害の範囲がある程度限られることから、有罪判決後、一定期間、犯罪を犯すことなく、民間企業で働いている、妻子がいるという事情を考慮しても、事実を公表されない法的利益が優越することが明らかであるとはいえないとして、削除請求を認めませんでした。


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