同一労働同一賃金ガイドライを踏まえ、基本給について、基本的な考え方を取上げます。
基本給
基本給は、毎月支給される給与(賃金)の中心であり、パート有期法8条の待遇の中核です。また、同一労働同一「賃金」というくらいなので、労働者・使用者ともに基本給をはじめとする賃金について、一番関心があるはずです。
しかし、基本給には、様々な種類のものが含まれています。そのため、不合理性の判断は容易ではありません。
基本給についての基本的な考え方
基本給の性質に応じて、非正規労働者に対して、その性質に沿った均等又は均衡な基本給が支給されているか?がポイントになります。
また、正社員の基本給が複数の性質を持つ場合は、それぞれの部分について、その性質に応じた均等又は均衡な待遇になっているか?を判断する必要があります。
基本給の種類
基本給には、以下のような種類があると考えられ、それらが複合的に支給されています。
①職能給
職能給は、労働者の能力や経験に応じて支給するものです。属人基準の典型です。
②成果給
成果給は、労働者の業績や成果に応じて支給するものです。
③勤続給
勤続給は、労働者の勤続年数に応じて支給するものです。同一労働同一賃金に馴染みやすいといえます。
④職務給
職務給は、職務の内容に応じて支給するものです。仕事基準の典型です。同一労働同一賃金に馴染みやすいといえます。
①職能給についての基本的な考え方
ガイドラインは、職能給について、以下の基本的な考え方を示しています。
労働者の能力又は経験に応じて支給するものについて、正社員と同一の能力又は経験を有する非正規労働者には、能力又は経験に応じた部分につき、正社員と同一の基本給を支給しなければならない。また、能力又は経験に一定の相違がある場合においては、その相違に応じた基本給を支給しなければならない。
職能給のパート有期法8条の適用
職能給について、そもそも、正社員の職能給と非正規労働者の職能給を比較できるのか?という問題があります。
比較する場合は、比較対象の正社員が現に従事している職務の価値と非正規労働者が従事している職務の価値とを比較することになると考えられます。
ガイドラインが問題ないとする例
ガイドラインは,以下の場合を問題ない例として挙げています。
(1) 基本給について,労働者の能力又は経験に応じて支給している会社はある能力の向上のための特殊なキャリアコースを設定している。正社員は,このキャリアコースを選択し,その結果としてその能力を習得した。非正規労働者は,その能力を習得していない。会社は,その能力に応じた基本給を正社員には支給し,非正規労働者には支給していない。
(2)定期的に職務の内容及び勤務地の変更がある正社員は,管理職となるためのキャリアコースの一環として,新卒採用後の数年間,店舗等において,職務の内容及び配置に変更のない非正規労働者の助言を受けながら,非正規労働者と同様の定型的な業務に従事している。正社員に対し,キャリアコースの一環として従事させている定型的な業務における能力又は経験に応じることなく,非正規労働者に比べ基本給を高く支給している。
(3)同一の職場で同一の業務に従事している非正規労働者であるAとBのうち,能力又は経験が一定の水準を満たしたBを定期的に職務の内容及び勤務地に変更がある正社員として登用し,その後,職務の内容や勤務地に変更があることを理由に,Aに比べ基本給を高く支給している。
(4)同一の能力又は経験を有する正社員と非正規労働者がいるが,正社員と非正規労働者に共通して適用される基準を設定し,就業の時間帯や就業日が土日祝日か否か等の違いにより,時間当たりの基本給に差を設けている。
ガイドラインが問題とする例
ガイドラインは,以下の場合を問題がある例として挙げています。
基本給について,労働者の能力又は経験に応じて支給している会社において,正社員が非正規労働者に比べて多くの経験を有することを理由として,正社員に対し,非正規労働者よりも基本給を高く支給しているが,正社員のこれまでの経験は正社員の現在の業務に関連性を持たない。
裁判例
福岡高裁平成30年11月29日判決は,30年以上臨時職員として勤務していた労働者と同時期に採用された正社員の基本給が2倍の格差を不合理だと判断しています。