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持ち帰り残業と残業代請求


持ち帰り残業が労働時間に当たるか?は、過労死の労災認定をめぐって問題になることが多いのですが、残業代請求においても問題になります。

使用者の明示又は黙示の指示があれば労働時間

 残業の事前許可制と残業代請求で触れたように、使用者の指示がなければ、労働時間と認めることはできません。

残業の事前許可制と残業代請求

残業が事前許可性となっている会社における残業代請求のポイントを解説します。

 そこで、労働者が自宅で仕事を行った、いわゆる持ち帰り残業が労働時間といえるのか?が問題になります。

持ち帰り残業は原則、労働時間に当たらない

 自宅は、使用者の指揮監督が及ばない労働者の私的な生活の場です。そのような私的な場で行われた業務は、使用者の指揮命令下の労働ではなく、原則として、労働時間とは認められません。

 そもそも、労働者は、使用者から持ち帰り残業の業務命令があっても従う義務がありません。持ち帰り残業が例外的に労働時間と認められるのは、使用者から業務遂行を指示され、労働者が承諾し、私生活上の行為と区別し労務を提供し業務を行った場合に限られると解されます。

 労働時間の立証は、労働者が行う必要があります。私生活と区別された労働時間をどのように立証するのかという立証の困難さが伴います。

 近年、情報通信技術の進歩により、会社のサーバーへ自宅からアクセスし業務を行うネット残業が増加しています。ネット残業では、サーバーへのアクセスログなどから労働時間を立証できる可能性があります。

在宅勤務の場合

 持ち帰り残業に関連して、労働者がインターネット等を介して自宅で在宅勤務を行った場合について触れておきます。

 ①在宅勤務が、私生活を営む自宅で行われていること、②使用者の指示により常時通信可能な状態に置くこととされていないこと、③業務が随時使用者の指示に基づいて行われていないことを要件に、労基法38条2項のみなし労働時間制が適用される場合があります。

 たとえば、労働契約上、勤務時間を午前9時~12時までとし、労働者が自宅内で仕事を専用とする個室を確保する等、勤務時間と私生活を混在しないようにする措置を講じた上で、随時使用者の具体的な指示に基づいた業務が行われる場合は、みなし労働時間制の適用はありません(みなし労働時間制については、事業場外のみなし時間制を参照)。


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