残業代請求において、実務上、労働時間か?が争われることの多い類型を解説します。
労働時間とは?
労基法が規制している労働時間は、休憩時間を除いて、現に労働をさせる時間です。つまり実労働時間のことです。
労働時間と休憩時間を合わせて拘束時間といいます。労基法は、拘束時間については規制していません。
残業代請求の対象になるのは、実労働時間における労働です。
手待時間
実労働時間には、実際に労働・作業を行っている時間だけではなく、作業と作業の間の待機時間も労働時間としています。この待機時間のことを手待時間といいます。
休憩時間と手待時間の違い
休憩時間とされている時間が、実質的には手待時間であると認められれば、労働時間として扱われます。そこで、休憩時間と手待時間との区別が問題となります。
手待時間は、使用者の指示があれば、直ちに作業に従事しなければならない時間です。したがって、使用者の指揮監督下に置かれています。一方、休憩時間は、使用者の指揮監督下から離れ、労働者が自由に使える時間です。
たとえば、昼食休憩中に、来客があった場合に即時に対応しなえればならないという場合は、手待時間に当たります。したがって、実際に来客がなくても労働時間になります。
仮眠時間
実務上、問題となることが多いのが仮眠時間が労働時間かどうか?です。大星ビル管理事件(最高裁平成14年2月28日判決)が参考になります。
最高裁は、労働者が労働から離れることを保障されて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないと評価することができると判断しています。
したがって、労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合は、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているということになります。
以上は、一般論ですが、大星ビル管理事件においては、仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられていて、実作業への従事の必要性が皆無に等しいなど実質的に義務付けがされていないと認めることができる事情がないので、仮眠時間を労働時間だと判断しています。
休憩時間を取らなかった場合は?
労働者側からの主張で、業務が忙しすぎて休憩時間が取れなかったとして、休憩時間を労働時間として残業代を請求することがよく見られます。
実際に、労働者が休憩時間も労働を行ったとしても、仮眠時間と同様に、労働時間性を基礎づける明示又は黙示の義務付けがあったことが必要であると解されます。そもそも、実労働時間の立証は、労働者でしなければならず、休憩を取らずに、間断なく労働していたことを立証する必要があります。