医療法人の社員総会の招集に関する最高裁決定を紹介します。
最高裁令和6年3月27日決定
医療法人の社員が、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(一般法人法)37条2項を類推適用して、裁判所の許可を得て、社員総会を招集できるか?が問題になりました。
ここでいう社員とは、従業員ではありません。株式会社でいうと、株主のことです。
事案の概要
医療法人の社員である抗告人らが、当該医療法人の理事長に対して社員総会の招集を請求したが、その後招集の手続が行われないと主張して、裁判所に対し、社員総会を招集することの許可を求めた。
最高裁の判断
最高裁は、医療法人の社員は、一般法人法37条2項を類推適用して、裁判所の許可を得て、社員総会を招集できないと判断しました。
一般法人法は、一般社団法人の適切な運営のために、37条1項において、一定の割合以上の議決権を有する社員が理事に対して社員総会の招集を請求することができる旨規定し、同条2項において、その請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合などには、当該社員は、裁判所の許可を得て、社員総会を招集することができる旨規定する。これに対し、医療法46条の3の2第4項は、医療法人の理事長は、一定の割合以上の社員から臨時社員総会の招集を請求された場合にはこれを招集しなければならない旨規定するが、同法は、理事長が当該請求に応じない場合について、一般法人法37条2項を準用しておらず、また、何ら規定を設けていない。このような医療法の規律は、社員総会を含む医療法人の機関に関する規定が平成18年法律第84号による改正をはじめとする数次の改正により整備され、その中では一般法人法の多くの規定が準用されることとなったにもかかわらず、変更されることがなかったものである。他方、医療法は、医療法人について、都道府県知事による監督(第6章第9節)を予定するなど、一般法人法にはない規律を設けて医療法人の責務を踏まえた適切な運営を図ることとしている。
以上によれば、医療法人について、一般法人法37条2項は類推適用されないと解するのが相当である。そうすると、医療法人の社員が同項の類推適用により裁判所の許可を得て社員総会を招集することはできないというべきである。