工作物責任に関して、マンションの管理組合が共有部の占有者に当たるか?を判断した最高裁判決を紹介します。
最高裁令和8年1月22日判決
共用部分からの水漏れにより損害を被ったマンションの住人が、管理組合に対して、民法717条に基づき損害賠償請求した事案です。
民法717条の工作物責任において、区分所有建物の管理組合が区分所有建物の占有者に当たるか?が争点になった判決です。
事案の概要
Yは、東京都内に所在する1棟の区分所有建の区分所有者の団体である。Xは、本件区分所有建物の専有部分である203号室の共有者である。
Yの規約には、共用部分の管理については、Yがその責任と負担においてこれを行うものとする旨の定め(20条)、Yは、Yが管理する共用部分の保全及び保守並びに修繕を行う旨の定め(31条)がある。
本件区分所有建物においては、平成25年10月から平成27年3月にかけて、4回にわたって、外壁コンクリート躯体部分及び床下スラブ部分の亀裂等により、203号室への漏水事故が発生した。上記亀裂等は、工作物の設置又は保存の瑕疵に当たり、上記亀裂等が生じた本件外壁部分等は、本件区分所有建物の共用部分に当たる。
原審の判断
原審は、Yは、本件外壁部分等について、民法717条1項本文の占有者に当たらないと判断し、Xの損害賠償請求を認めませんでした。
最高裁の判断
最高裁は、区分所有者の団体は、特段の事情がない限り、区分所有建物の共用部分について、民法717条1項本文の占有者に当たると判断しました。
民法717条1項本文の趣旨は、工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって損害が生じた場合、このように通常有すべき安全性を欠く状態にある工作物を支配管理して上記損害の発生を防止すべき地位にある者に損害賠償責任を負わせることにあると解される。
区分所有法によると、区分所有者は、全員で、区分所有建物等の管理を行うための団体を構成し(3条前段)、区分所有建物の共用部分の管理に関する事項は集会の決議で決するとされている(18条1項)。これら区分所有法の規定に照らすと、区分所有建物の共用部分については、基本的に、区分所有者の団体がこれを支配管理して通常有すべき安全性を確保していくことが予定されているものというべきである(このことは、区分所有法25条及び26条に管理者の選任及び権限等についての定めがあるからといって、左右されるものではない。)。そうすると、区分所有者の団体は、特段の事情がない限り、区分所有建物の共用部分を支配管理してその設置又は保存の瑕疵による損害の発生を防止すべき地位にあるということができる。
また、区分所有者の団体は、区分所有者からその持分に応じて共用部分の管理のための費用を徴収しているのが通例であるところ(区分所有法19条参照)、共用部分の設置又は保存に瑕疵があることによって損害が生じた場合には、区分所有者の団体の財産からその賠償をすることが、区分所有者の通常の意思に沿い、損害を被った者の保護にも資するものといえる。
以上によれば、区分所有者の団体は、特段の事情がない限り、区分所有建物の共用部分について、民法717条1項本文にいう「占有者」に当たるというべきである。