親子関係不存在確認請求の訴えの利益があると判断した最高裁判決を紹介します。
最高裁令和4年6月24日判決
親子関係不存在確認訴訟に関して、訴えの利益の有無が問題になった事案です。
訴えの利益とは、訴訟提起された事件について、判決をすることで紛争が解決するか?という問題です。
訴えの利益がない場合、訴えは却下されます。訴え却下とは、裁判所が具体的な権利関係等についての判断はせず、いわば門前払いにすることです。
事案の概要
亡A及び亡Bは、亡Cと亡Dとの間の子であり、亡Eは、戸籍上亡Cと亡Dとの間の子とされている者である。
亡Aは昭和25年に、亡Eは平成14年に、亡Bは平成29年に、それぞれ死亡した。亡Bの戸籍上の法定相続人は、亡Aの子である上告人外1名及び亡Eの子ら3名である。
上告人は、検察官に対し、亡Eと亡C及び亡Dとの間の各親子関係の不存在の確認を求めた。
原審の判断
原審は、上告人には、訴えの利益がないとして訴えを却下しました。
上告人は、本件各親子関係が不存在であることにより自己の身分法上の地位に直接影響を受けることはないから、本件訴えにつき法律上の利益を有しない。
最高裁の判断
最高裁は、以下のとおり、上告人に訴えの利益があると判断しました。
上告人は、亡C及び亡Dの孫であり、亡Eの戸籍上の甥であって、亡Bの法定相続人であるところ、本件各親子関係が不存在であるとすれば、亡Bの相続において、亡Eの子らは法定相続人とならないことになり、本件各親子関係の存否により上告人の法定相続分に差異が生ずることになる。親子関係の不存在の確認の訴えを提起する者が当該訴えにつき法律上の利益を有するというためには、当該親子関係が不存在であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることを要すると解されるところ、法定相続人たる地位は身分関係に関するものであって、上告人は、その法定相続分に上記の差異が生ずることにより、自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けるということができる。
以上によれば、上告人は、本件訴えにつき法律上の利益を有するというべきである。