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付加金


労基法114条の付加金を取り上げます。残業代請求で訴訟を提起する場合、付加金を請求します。付加金とは、どういったものなのでしょうか?

付加金とは?

 労基法20条・26条・37条の規定に違反した使用者、39条7項の賃金を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により裁判所が支払いを命じることができると規定されています(労基法114条)。付加金の金額は、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額と同一額と規定されています。

付加金の対象となる使用者の義務

 以下の義務に違反した場合、使用者は、付加金を支払わなければならない可能性があります。

付加金の対象となる使用者の義務

①解雇予告手当(労基法20条)

 即時解雇の場合、使用者は、30日分以上の平均賃金を支払う必要があります。

②休業手当(労基法26条)

 使用者の帰責事由による休業の場合、使用者は、平均賃金の60%を支払う必要があります。

③時間外、休日、深夜の割増賃金

 いわゆる残業代です。

④年次有給休暇中の賃金(労基法39条7項)

付加金の支払いは、裁判所の裁量による

 上記の労基法違反があったとしても、当然に、付加金を支払わなければならないわけではありません。労働者の請求により、裁判所が支払いを命じる判決が確定することで、初めて支払義務が生じます。

 そして、付加金の支払いは、裁判所の裁量に委ねられています。したがって、裁判所は、必ずしも付加金の支払いを命じる必要はありません。使用者の義務違反の程度・態様、労働者の不利益の性質・内容等諸般の事情を考慮して支払義務の存否と金額を決めるものとされています。

 なお、付加金の金額も、裁判所に裁量があると解されているようです。減額した付加金の支払いを命じた裁判例もあります。

判決確定までに義務違反が消滅

 使用者に付加金の支払いを命じるのが相当な事情があったとしても、判決確定前にその義務違反状態が消滅してしまうと、もはや付加金の支払いを命じることはできません。

 つまり、付加金の支払いを命じる判決の言渡し後、使用者が判決確定までに義務違反を消滅させれば、付加金を支払う必要はありません。たとえば、未払いの残業代と残業代と同額の付加金の支払いを命じる判決が言い渡された場合、使用者がその判決確定前に、未払い残業代を全額支払えば、付加金を支払う必要はありません。

判決確定によって遅滞に陥る

 付加金は、支払いを命じる判決の確定時に、履行遅滞となります。遅延損害金の利率は民法所定の3%です(民法404条1項・2項)。

除斥期間は5年

 付加金は、使用者の義務違反があった時から5年以内に請求しなければなりません(労基法114条但書)。この5年間の期間は、除斥期間と解されています。除斥期間は、消滅時効と異なり、期間の経過により、当然に権利が消滅します。

労働審判では支払を命じることができない

 上記のように、付加金は、支払いを命じる判決の確定によって、初めて支払義務が発生します。労働審判における審判は判決ではないことから、付加金の支払いを命じることはできないとされています。

 除斥期間の関係で、労働審判が訴訟に移行することに備えて、労働審判においても付加金の支払いを請求することがあります。大阪地裁では、付加金を訴額に算入するという独自の運用を行っていましたが、最高裁において、付加金は訴額に算入されないことになったので、労働審判において付加金を請求しないという選択肢はなくなったように思います。


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