生成AIの普及により、法律分野でも契約書の作成等への活用が増加しています。一見、便利に思える生成AI、ですが、落とし穴はないのでしょうか?生成AIが作った合意書を例に説明します。
ChatGPTで合意書を作った

ChatGPTで合意書を作れるって聞いて、さっそく使ってみたよ~!無料だし、これでバッチリだよね?

えっ、ChatGPT?
その合意書、危ないんじゃないかな。

えぇっ!?AIが作ったのに!?

AIが作ったからこそ、危ないんだよ。
生成AIのそれっぽさに潜む罠
ChatGPTなどの生成AIを利活用する企業、個人が増加しています。生成AIの利用は、コスト削減への期待と手軽さが魅力です。
法律の分野でも、契約書のチェックや作成にとどまらず、合意書、内容証明、訴状なども生成AIを利用することが簡単に作成可能です。
実際、法律相談で、生成AIが作ったと思われる書面を目にする機会があります。生成AIが作った法律文書は、一見すると、「それっぽい」内容です。しかし、弁護士から見ると、危険な内容になっていることがあります。

生成AIが作る法律文書がそれっぽいのは、ネットにある文章を元に平均的な文体を再構成してるから。
法的リスクまで評価していません。
生成AIが作る合意書の具体的リスク
生成AIが作る合意書の具体的なリスクとして、以下のようなものが考えられます。
法律要件の不備等
ある法律の条文の効果を発生させるには、法律の要件を充足している必要があります。しかし、生成AIが作る合意書は、法律の要件を欠いていることがあります。
当事者の実情に即していない
生成AIは、ネット上にある文例から平均的な文体を再構成しています。したがって、画一的な内容であり、当事者の実情に即していません。
また、業界特有の慣行や規制に対応していないことも多いでしょう。
法改正や最新の判例に対応していない
生成AIが作る合意書は、モデルの学習データの時点での法律に基づいています。その後の法改正や判例には対応できません。
曖昧な表現による紛争のリスク
実務上の運用を想定していなかったり、解釈の余地を残す文言が用いられて、合意書を取り交わしたにもかかわらず、紛争のリスクが残ることがあります。
実際に想定されるリスク
生成AIが作った合意書を使うことで、どんなリスクが生じるのでしょうか?想定されるリスクを考えてみました。
労災保険の給付が受けれない?
労災事故で、被災労働者が、会社に安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求をしたケースです。会社と合意する際に、示談金や解決金が労災保険の給付とは、別に受取るものであることを明記しておかないと、将来の労災保険の給付を受けれない可能性があります。

ChatGPTで作った合意書には、そのような記述はありませんでした。
損害賠償を放棄した?
交通事故で、物損と人損の両方の損害がある場合、先に、物損について和解することは、よくあります。先に、物損だけ和解する場合の合意書をChatGPTで作ると、「相互に責任の有無および程度について争わない」という謎の文言が入っていました。

損害賠償請求権を放棄したともとれる内容です。
いろいろ足りない
最後に、個人間の借金について合意書をChatGPTで作ると、いろいろ足りない合意書になっていました。
ChatGPTで作った合意書に足りないもの
①返済方法
②期限の利益喪失条項
③遅延損害金

もちろん、当事者が合意してなければ問題はないのですが…
生成AIの利活用方法
生成AIは、初期ドラフトの作成ツールとしては、非常に有用です。しかし、あくまでも下書き・ドラフトです。そのまま使うわないのが、鉄則です。
「無料・速い・便利」の裏には、見えない損害リスクがあることを忘れないでください。
必ず専門家のチェックを
合意書は、時に、将来を左右することになる重要な文書です。短期的なコスト削減が、長期的な大きなリスクになることがあります。そうならないように、専門家である弁護士のチェックを経るのが重要です。
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