民事執行法の改正と第三者からの情報取得手続

民事執行法の改正によって、新設された第三者からの情報取得手続を取り上げます。

第三者からの情報取得手続

　民事執行、つまり、債務者の財産を差し押さえる場合、債務者がどのような財産を持っているか？を債権者自身が調査する必要があります。そのため、債務者が保有している財産が判明していない場合、強制執行が空振りになることが珍しくありません。

　そこで、第三者からの情報取得手続が新設されました（民事執行法204条以下）。この手続きは、裁判所を通じて、債務者以外の第三者から債務者の財産について情報を提供させる制度です。対象となる債務者の財産は、①不動産、②勤務先、③預貯金等の3つです。

　登記所から債務者が所有する土地、建物に関する情報を取得することができます（民事執行法205条1項）。

　債務名義の種類は問わず、実体法上の権利の制限もありません（民事執行法205条1項1号）。

　不動産に関する情報取得手続の申立てを行うには、事前に財産開示手続を行っていることが必要になります（民事執行法205条2項）。

　なお、財産開示手続については、民事執行法の改正と財産開示手続をご参照ください。

　民事執行法の改正は、2020年4月1日から施行されます。しかし、不動産に関する情報取得手続は、2019年5月17日から2年以内の政令で定める日に施行されます。

　市町村、日本年金機構等から勤務先に関する情報を取得することができます（民事執行法206条1項）。

　債務名義の種類は問いません（民事執行法206条・197条1項）が、実体法上の権利について制限があります。勤務先に関する情報を取得手続の申立てができるのは、①養育費等の債権又は②人の生命、身体の侵害による損害賠償請求権の債権者に限られます（民事執行法206条・151条の2第1項）。

　勤務先に関する情報を取得手続も事前に財産開示手続を行っていることが必要です（民事執行法206条2項・205条2項）。

　銀行や証券会社等から預貯金、上場株式、国債等に関する情報を取得することができます（民事執行法207条1項）。

　債務名義の種類は問わず、実体法上の権利の制限もありません（民事執行法207条1項）。

　預貯金等の情報手続は、事前に財産開示手続手続を行っている必要はありません。ただし、申立てを行うには、財産開示手続と同様、不奏功要件が必要となります（民事執行法207条1項・197条1項）。