原告が複数の共同訴訟における訴訟救助の対象について判断した最高裁決定を紹介します。
最高裁令和5年10月19日決定
原告が複数の共同訴訟における訴訟救助の対象となる額が、問題になった事案です。
訴訟救助
民事訴訟を提起するには、訴え提起時(訴状提出時)に、所定の手数料を支払わなければなりません(民事訴訟費用等に関する法律3条・4条)。
訴訟救助という制度があります(民訴法82条以下)。資力がない人の申立てにより、裁判所が訴え提起時の手数料等の裁判費用の支払いを猶予する制度です。
訴訟救助が認められるには、以下の要件を充足することが必要です(民訴法82条1項)。
事案の概要
Xらを含む32名は、豪雨による河川の氾濫により被災したと主張して、各自の被った損害につき、Yほか3名に対して損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を求める訴えを共同して提起するとともに、訴訟上の救助を申し立てた。
原々審は、Xらは民訴法82条1項本文に規定する要件を欠くことを理由として、Xらの上記の申立てを却下したところ、Xらが即時抗告をした。
原審の判断
原審は、共同訴訟における訴訟救助の対象は、訴え提起の手数料全額だと判断しました。
共同して訴えを提起した各原告の請求の価額を合算したものを訴訟の目的の価額とする場合には、各原告は上記訴訟の目的の価額を基礎として算出される訴え提起の手数料の全額を各自納める義務を負うから、訴え提起の手数料につき訴訟上の救助の付与対象となるべき額は、いずれの原告についても、上記全額である。そうすると、上記の場合において、民訴法82条1項本文にいう「訴訟の準備及び追行に必要な費用」として考慮すべき訴え提起の手数料の額は、いずれの原告についても、上記全額である。
最高裁の判断
最高裁は、共同訴訟における訴訟救助の対象は、各原告の請求の価額に応じて案分した額だと判断しました。
共同して訴えを提起した各原告の請求の価額を合算したものを訴訟の目的の価額とする場合において、各原告の請求に係る訴え提起の手数料の額は、上記訴訟の目的の価額を基礎として算出される訴え提起の手数料の額を各原告の請求の価額に応じて案分して得た額であると解される。
したがって、上記の場合において、訴え提起の手数料につき各原告に対する訴訟上の救助の付与対象となるべき額は、上記のとおり案分して得た額に限られると解するのが相当である。
各原告は、共同して訴えを提起することなく個別に訴えを提起したとしても訴訟上の救助の付与を受けることができるのであるから、他の共同原告の請求に係る訴え提起の手数料の支払を要することを前提に各原告につき訴訟上の救助による救済を図る必要性があるとは考えられない。
したがって、上記の場合において、各原告につき民訴法82条1項本文にいう「訴訟の準備及び追行に必要な費用」として考慮すべき訴え提起の手数料の額は、上記のとおり案分して得た額であると解するのが相当である。