不貞行為を理由とする損害賠償請求と人訴法8条1項の関係を判断した最高裁決定を紹介します。
離婚請求の原因である事実によって生じた損害賠償請求
離婚請求の原因である事実によって生じた損害賠償請求は、離婚訴訟と併せて家庭裁判所に訴訟提起することができます(人訴法17条1項)。また、すでに、離婚訴訟事件が係属している家裁に、訴訟提起することもできます(人訴法17条2項)。
(関連請求の併合等)
第十七条 人事訴訟に係る請求と当該請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求とは、民事訴訟法第百三十六条の規定にかかわらず、一の訴えですることができる。この場合においては、当該人事訴訟に係る請求について管轄権を有する家庭裁判所は、当該損害の賠償に関する請求に係る訴訟について自ら審理及び裁判をすることができる。
2 人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求を目的とする訴えは、前項に規定する場合のほか、既に当該人事訴訟の係属する家庭裁判所にも提起することができる。この場合においては、同項後段の規定を準用する。
3 第八条第二項の規定は、前項の場合における同項の人事訴訟に係る事件及び同項の損害の賠償に関する請求に係る事件について準用する。
さらに、離婚請求の原因である事実によって生じた損害請求訴訟が第1審裁判所に係属している場合は、係属している第1審裁判所は、相当と認めるときは、申立てにより、その訴訟事件を離婚訴訟が係属している家裁に移送することができます(人訴法8条1項)。
(関連請求に係る訴訟の移送)
第八条 家庭裁判所に係属する人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟の係属する第一審裁判所は、相当と認めるときは、申立てにより、当該訴訟をその家庭裁判所に移送することができる。この場合においては、その移送を受けた家庭裁判所は、当該損害の賠償に関する請求に係る訴訟について自ら審理及び裁判をすることができる。
2 前項の規定により移送を受けた家庭裁判所は、同項の人事訴訟に係る事件及びその移送に係る損害の賠償に関する請求に係る事件について口頭弁論の併合を命じなければならない。
最高裁平成31年2月12日決定
人訴法8条1項は、家庭裁判所に係属する人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟の係属する第1審裁判所は、相当と認めるときは、申立てにより、当該訴訟をその家庭裁判所に移送することができることなどを規定している。その趣旨は、人事訴訟と審理が重複する関係にある損害賠償に関する請求に係る訴訟について、当事者の立証の便宜及び訴訟経済の観点から、人事訴訟が係属する家庭裁判所に移送して併合審理をすることができるようにしたものである。
離婚訴訟の被告が、原告は第三者と不貞行為をした有責配偶者であると主張して、その離婚請求の棄却を求めている場合において、被告が第三者を相手方として提起した不貞行為を理由とする損害賠償請求訴訟は、人訴法8条1項にいう「人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟」に当たる。