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子の引渡しの間接強制を権利濫用ではないと判断した最高裁決定


子の引渡しの間接強制に関する最高裁決定を紹介します。

最高裁令和4年11月30日決定

 子の引渡しの対象となった子が引渡を拒絶している場合に、子の引渡しの間接強制の申立てを行うことが権利濫用に当たるか?を判断した最高裁決定です。本決定で最高裁は、権利濫用に当たらないと判断しました。

 ※子の引渡しの間接強制を権利濫用だと判断した最高裁平成31年4月26日決定:子の引渡しの間接強制を権利濫用と判断した最高裁決定

事案の概要

 XとYは、平成24年に婚姻し、平成25年2月に長男を、平成27年10月に二男をもうけた。

 Yは、X及び本件子らと同居していたが、令和2年8月、本件子らを連れて転居し、Xと別居した。

 和歌山家庭裁判所は、令和2年12月、Xの申立てに基づき、本件子らの監護者をXと指定し、Yに対して本件子らをXに引き渡すよう命ずる審判をした。本件審判は、令和3年3月29日に確定した。

 Xは、令和3年4月5日、本件子らの引渡しを受けるため、Y宅に赴き、二男についてはその引渡しを受けた。他方、長男については、X及びYからの約2時間にわたる説得に応ずることなく、Xの下に行くとYと会えなくなると述べたり、長男を抱えようとしたXを強く押しのけたりするなどして、Xに引き渡されることを強く拒絶したため、Xは、その引渡しを受けることができなかった。

 その後、Yは、Xに対し、長男がXを怖がっていることから長男の引渡しについて具体的な提案をすることができないとした上で、長男と二男を面会させる機会を設けることを提案した。Xは、これに応ずることとし、Yとの間で、令和3年5月30日に長男と二男を面会させることを合意した。

 Yは、同日、長男を連れて上記の面会の待ち合わせ場所に赴いた。長男は、Xが上記待ち合わせ場所に来ることを知らされていなかったため、Xの姿を見て強く反発し、Xのことは全部嫌だなどと述べ、Xに抱かれることを拒否し、泣きながらYに対してY宅に帰ることを強く求めるなどした。

 Xは、令和3年6月9日、Yに対して長男をXに引き渡すよう命ずる審判を債務名義として、間接強制の方法による子の引渡しの強制執行の申立てを行った。

 原々審は、同年7月13日、Yに対し、長男をXに引き渡すよう命ずるとともに、これを履行しないときは1日につき2万円の割合による金員をXに支払うよう命ずる決定をした。

 Yは、同月26日、原々決定に対し執行抗告をした。Yは、抗告の理由として、長男がXに引き渡されることを明確に拒絶する意思を表示していること等からすれば、本件申立ては、間接強制決定をするための要件を満たさず、又は権利の濫用に当たる旨主張した。

原審の判断

 原審は、Xによる間接強制の申立ては、権利濫用に当たると判断しました。

 長男は、令和3年4月5日及び同年5月30日の2回にわたり、Xに引き渡されることを明確に拒絶する意思を表示しており、この意思は、現在における長男の真意であると認めることができるから、現時点において、長男の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ長男の引渡しを実現するため合理的に必要と考えられるYの行為を具体的に想定することは困難というべきである。そうすると、本件審判を債務名義とする間接強制決定によりYに長男の引渡しを強制することは、過酷な執行として許されないというべきであり、このような決定を求める本件申立ては、権利の濫用に当たる。

最高裁の判断

 最高裁は、以下のように、Xによる間接強制の申立ては、権利濫用に当たらないと判断しました。

 家庭裁判所の審判により子の引渡しを命ぜられた者は、子の年齢及び発達の程度その他の事情を踏まえ、子の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ、合理的に必要と考えられる行為を行って、子の引渡しを実現しなければならないものであり、このことは、子が引き渡されることを望まない場合であっても異ならない。したがって、子の引渡しを命ずる審判がされた場合、当該子が債権者に引き渡されることを拒絶する意思を表明していることは、直ちに当該審判を債務名義とする間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではないと解される。

 長男がXに引き渡されることを拒絶する意思を表明したことは、直ちに本件申立てに基づいて間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではなく、本件において、ほかにこれを妨げる理由となる事情は見当たらない。原審は、上記意思が現在における長男の真意であると認められ、長男の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ長男の引渡しを実現するため合理的に必要と考えられるYの行為を具体的に想定することが困難であるとして、本件申立てが権利の濫用に当たるというが、本件審判の確定から約2か月の間に2回にわたり長男がXに引き渡されることを拒絶する言動をしたにとどまる本件の事実関係の下においては、そのようにいうことはできない。したがって、本件申立てが権利の濫用に当たるとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法がある。


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