同一労働同一賃金ガイドライには記載されていない待遇について、基本的な考え方を取上げます。
同一労働同一賃金ガイドラインに記載のない待遇
同一労働同一賃金ガイドラインは、同一労働同一賃金の基本的な考え方について参考となるものです。しかし、すべての待遇について網羅的に記載されているわけではありません。
同一労働同一賃金ガイドラインに記載されていない待遇については、その性質・目的に応じて、不合理性を判断します。
住宅手当
住宅に要する費用を補助する目的で支給されると考えられます。したがって、住宅や居住について、正社員と同じ状況にある非正規労働者に対しても正社員と同様に支給する必要があります。
ハマキョウレックス事件の差戻審では、広域転勤の有無による相違を不合理ではないと判断しています。この事件では、正社員は全国転勤の義務があり、契約社員には全国転勤義務がなく、転勤義務のない契約社員に住宅手当を支払わないことが不合理ではないと判断されました。
一方、転勤義務のない地域限定正社員に住宅手当が支給されていたにもかかわらず、転勤義務のない契約社員に住宅手当を支給しないことは不合理だと判断した日本郵便事件(同一労働同一賃金に関する最高裁判決③・同一労働同一賃金に関する最高裁判決④)・メトロコマース事件の高裁判決は、最高裁の上告不受理で確定しています。
家族手当
扶養家族の生活費用の補助として支給される手当と考えられます。したがって、家族の扶養状況が同じ非正規労働者に対しても正社員と同様に支給する必要があります。
日本郵便事件最高裁判決は、扶養手当(家族手当)を長期継続勤務の期待と確保が目的であるとして、扶養家族があり、かつ、相応に継続勤務が見込まれる契約社員への不支給は不合理だと判断しました。
相応に継続勤務が見込まれる契約社員とは、5年以上を目安にしているのではないかと考えられます。
また、下級審の判決として、高松高裁令和元年7月8日判決は、正社員と同じ要件を満たす非正規労働者に対して支給しないのは、不合理だと判断しています。
無事故手当
運送会社等で優良ドライバーの育成・顧客の信頼獲得を目的に支給される手当と考えられます。
したがって、同じ運転業務に従事する非正規労働者に対しても正社員と同様に支給する必要があります。
ハマキョウレックス事件最高裁判決は、正社員にのみ無事故手当を支給するのは不合理だと判断しています。
勤続褒賞
会社によっては,長期勤務に対する褒賞として,賞金・賞状等を労働者に与えることがあります。
このような勤続褒賞の実態として,正社員に対しては,業績や業務内容に関わらず,勤務年数によって一律に付与している場合は,非正規労働者にも同様に付与する必要があります。
メトロコマース事件では,勤続10年の褒賞を契約社員に支給しなかったことを不合理と判断した高裁の判断は,上告不受理で確定しています。