無期労働契約と有期労働契約の労働条件の不合理な相違に関する最高裁判決

無期労働契約と有期労働契約との間の労働条件の不合理な相違を禁止する労働契約法旧20条の解釈に関する2件の最高裁判決を紹介します。

労働契約法旧20条

 労働契約法旧20条は,有期労働契約と無期労働契約との間の労働条件の不合理な相違を禁止しています。いわゆる同一労働同一賃金の根拠条文です(現在は,パート有期法8条)。対象となる労働条件は,労働条件全般です。したがって,賃金や労働時間だけでなく,災害補償や福利厚生等にも及びます。

 不合理な相違と認められるかどうかは,①職務の内容(業務の内容・当該業務に伴う責任の程度),②当該職務の内容・配置の変更の範囲,③その他の事情を考慮して個々の労働条件ごとに個別に判断することになります。

 ※詳しくは,同一労働同一賃金の概要と会社の対応参照

 特に,通勤手当,安全管理,食堂の利用等について労働条件を相違させることは,上記①~③を考慮し,特段の理由がない限り合理的とは認められないと解されています。

 労働契約法旧20条に違反する労働条件は,無効です。また,不法行為に基づく損害賠償請求の対象になりうると解されています。無効とされた労働条件については,基本的に無期労働契約の労働条件と同じ労働条件が認められると解されていましたが,学説では異論もあります。今回の最高裁判決は,その点を否定しています。