給料が歩合給の場合でも残業代請求できますか?
歩合給でも残業代請求は可能
歩合給や出来高給の場合も労基法の割増賃金規定の規制は及びます。固定残業代の話しで触れた高知県観光事件の最高裁判決は、通常の労働時間の賃金部分と時間外・深夜の割増賃金部分とを判別できない場合は、歩合給の支給によって、時間外・深夜労働の割増賃金を支払ったということはできないと判断しています。
高知県観光事件は、オール歩合制のタクシー運転手の事案です。オール歩合制でも割増賃金規定の規制は及びます。したがって、残業代を請求することができます。
「1」の部分は支払わなくていい
歩合給の場合も残業代が請求できます。ただし、歩合給の場合は、時間を延長し働いたことで、成果が上がっているという側面があると考えられています。
したがって、時間外・休日・深夜労働に対する時間当たりの賃金、つまり、「1」に相当する部分は、基礎になった賃金総額の中に含まれていると考えられます。
つまり、歩合給の場合は、残業代として請求できるのは、割増部分の「0.25」(時間外、深夜労働)や「0.35」(休日労働)です(昭和23年11月25日基収第3052号、昭和63年3月14日基発第150号,平成6年3月31日基発第181号)。
もう少し、かみ砕いて説明します。
時間外労働等の割増率は、以下の「労働時間規制と割増賃金」に記載したとおりです。
労働時間規制と割増賃金
労基法の労働時間規制は、1日8時間・1週40時間、さらに週1日の休日の付与を義務付けています。 これらを超過する時間外・休日労働には、割増賃金を支払う必要があります。 割増賃金の割増率は、労基法の所定割増率以上であることが必要です。
歩合制でない場合に時間外労働を1時間行った場合、1時間分の賃金がそもそも支払われていないので、割増賃金と合わせて、1.25倍の賃金を残業代として請求することができます。
しかし、歩合給の場合、「1」の部分は支払われているということです。
計算方法
歩合給の場合の基礎賃金は、通常の計算と異なります。
歩合給の場合の基礎賃金の計算方法
歩合給金額÷月の総労働時間