月60時間を超える残業を行った場合の割増賃金と代替休暇を取上げます。
月60時間を超える時間外労働の割増率は50%
労基法は、1日8時間・1週40時間の労働時間規制を定めています(32条)。この時間を超えて労働者を労働させる場合、労基法所定の割増賃金を支払う必要があります。時間外労働の労基法所定の割増率は25%です(労基法37条1項本文、労働時間規制と割増賃金参照)。
25%の割増賃金の支払で済むのは、1か月の合計が60時間までの時間外労働です。1か月60時間を超える時間外労働をさせる場合は、割増率50%以上の割増賃金を支払わなければなりません(労基法37条1項但書)。
残業代の支払に代えて代替休暇を与えてもいい
月60時間超過の割増賃金は、平成20年の労基法の改正によって規定されました。仕事と生活の調和政策の一環として、とくに長い残業を抑制するために導入されることになったのです。
そのような経緯に鑑み、月60時間超過の割増賃金のうち、通常の時間外労働の割増率に付加された割増率部分(25%部分)については、労使協定で定める場合は、割増賃金の支払に代えて、通常の賃金を支払う代替休暇を与えることができます(労基法37条3項)。
労使協定で定める事項
割増賃金の支払に代えて、代替休暇を与えるには、事業場の過半数組合または過半数代表者との間で労使協定を締結することが必要です。労使協定には次の事項を定める必要があります。
①の算定式は、通常、月60時間超過時間外労働時間数×(50%-25%)となります。
②は、1日又は半日の単位とすべきとされています。代替休暇以外の通常の賃金が支払われる休暇と合わせて1日又は半日とすることもできます。
④と⑤は通達で労使協定で定めるべき事項とされています。
平成31年3月まで中小企業は猶予される
月60時間超過の時間外労働に対する割増賃金の支払については、中小企業はその適用が猶予されていました。平成31年4月1日からは猶予期間は終了し、中小企業についても適用されます。
なお、中小企業とは、資本金3億円以下の事業主または常時使用する労働者の数が300人以下の事業主のことをいいます。なお、小売業・サービス業・卸売業については、基準が異なります。