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養育費の強制執行手続のワンストップ化


令和6年5月の家族法改正により養育費の規定が新設されました。その内の養育費の強制執行手続のワンストップ化を取上げます。

家族法の改正

 共同親権の導入等を内容とする民法の家族法の改正法が、令和6年5月17日に成立し、同24日に公布されました。

 なお、改正法の施行は公布日から2年以内の政令で定める日となっています。

養育費の規定の新設

 家族法の改正では、養育費に関する多くの規定が新設されました。今回、取上げるのは、強制執行の手続について規定している民事執行法です。

養育費の強制執行手続のワンストップ化

 債権者が、債務者の財産に対して強制執行の申立てを行うには、債務者の財産を特定しなければなりません。

 債務者の財産を特定するための手続として、民事執行法は、①財産開示手続と②第三者からの情報取得手続を用意しています。

 強制執行、財産開示手続、第三者からの情報取得手続は、それぞれ別個の手続です。したがって、債権者は、都度、申立てを行う必要があります。

 民事執行法の改正により、養育費に関しては、債権者が1回の申立てで、財産開示手続・第三者からの情報開示で判明した債務者の給料の差押えができるようになります(民事執行法167条の17第1項)。

①財産開示手続

 養育費等の請求権について、執行力のある債務名義を有する債権者が、財産開示手続の申立てをした場合、債務者が開示した給与債権に対する差押命令の申立てをしたとみなされます。

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養育費等の請求権には、養育費以外に、婚姻費用・扶養料が含まれます(以下、同様)。

 財産開示手続において、債務者が財産を開示しなかった場合、裁判所は、債務者の住所のある市区町村に対して、勤務先に関する情報提供を命じる義務を負います(民事執行法167条の17第2項)。つまり、債権者は、改めて、第三者からの情報取得手続の申立てをする必要がなくなります。

②第三者からの情報取得手続

 養育費等の請求権について、執行力のある債務名義を有する債権者が、第三者からの情報取得手続の申立てをした場合、債務者が開示した給与債権に対する差押命令の申立てをしたとみなされます。

 勤務先に関する第三者からの情報取得手続は、財産開示手続を行っていることが要件となっています(民事執行法205条2項、206条3項)。

 上記のとおり、財産開示手続の申立てをすれば、裁判所から市区町村に対し、勤務先に関する情報提供が命じられます。

 したがって、養育費の債権者が、改めて第三者からの情報取得で、勤務先に関する情報を得ようとするのは、日本年金機構等社会保険関係に限られます。

給与債権が特定できない場合

 財産開示手続・第三者からの情報取得手続によっても、債務者の勤務先が特定できない場合、裁判所は、債権者に対して、相当の期間を定め、当該期間内に差し押さえるべき債権を特定するために必要な事項の申出をするように命じることができます(民事執行法167条の17第6項)。

 債権者が、期間内に、差し押さえるべき債権を特定するために必要な事項の申出をしない場合、差押命令の申立ては、取下げたものとみなされます。

養育費請求権の先取特権

 養育費請求権について執行力のある債務名義がない場合でも、養育費請求権については、一般の先取特権を有します(民法306条3項、308条の2)。

 上記の手続は、子の監護の費用の一般の先取特権に基づく強制執行にも準用されます(民事執行法193条2項、197条2項、206条2項)。


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