相続法の改正と改正前後の法律の適用関係
相続法が約40年ぶりに大幅に改正されます。改正法施行前後の法律の適用関係を整理します。
改正相続法の概要
今回の相続法改正では,主として,以下のような改正がなされます。
(1)配偶者居住権,配偶者短期居住権の新設
(2)配偶者に対する居住用不動産の贈与等の遺産分割等に関する改正
(3)自筆証書遺言の方式緩和等の遺言に関する改正
(4)遺留分制度の改正
(5)相続の効力等に関する改正
(6)特別の寄与の新設
改正相続法の施行日
一連の相続法の改正は,以下の4段階の施行日が決まっています。
(1)2019年1月13日
すでに,改正法が施行されているのが,自筆証書遺言の方式緩和です。
(2)2019年7月1日
この日に,基本的に今回の改正相続法が施行されます。
(3)2020年4月1日
配偶者居住権関係については,この日が施行日となります。なお,配偶者短期居住権についても同様です。
(4)2020年7月10日
遺言書保管法(遺言書保管制度参照)の施行日が最も遅く,2020年7月10日となります。
経過措置
改正相続法の施行日は,上記のとおりです。実際の相続に,改正法が適用されのるか?は,相続開始時を基準に旧法主義を採用するのが原則となります。
したがって,改正法は,施行日後に開始した相続について適用されます。施行日前に開始した相続は,旧法が適用されます。
しかし,以上の原則に対して,以下の例外があるので,注意が必要です。
①権利の承継の対抗要件
受益相続人による通知の特例(899条の2)は,施行日前に開始した相続について,遺産分割によって承継が行われる場合に適用されます。
②夫婦間における居住不動産の贈与等
改正法施行日後に行われた贈与等について適用されます。相続開始が施行日後であっても,贈与等が施行日前であれば,改正法は適用されません。
③遺産分割前の預貯金の払戻
新法主義が採用されます。つまり,相続開始が施行日前であっても,施行日後は,改正法が適用されます。
④自筆証書遺言の方式緩和
施行日後に作成された遺言について改正法は適用されます。つまり,相続開始が施行日後であっても,施行日前に作成された遺言については,改正法は適用されません。
⑤配偶者居住権
配偶者居住権を遺贈することが認められますが,施行日前にされた配偶者居住権の遺贈は無効とされます。