財産分与の審判の申立ての却下審判に対して、申立ての相手方が即時抗告できるか?を判断した最高裁決定を紹介します。
最高裁令和3年10月28日決定
財産分与の審判の申立てを却下する審判に対して、審判の申立ての相手方が即時抗告できるか?が問題になりました。
事案の概要
YとXは、平成23年に婚姻をしたが、平成29年8月9日に離婚をした。
Yは、令和元年8月7日、Xに対し、財産の分与に関する処分の調停の申立てをした。この調停事件は、令和元年11月、不成立により終了したため、家事事件手続法の規定により、上記申立ての時に第1事件の申立てがあったものとみなされた。
Xは、令和2年3月、Yに対し、第2事件の申立てをした。
原々審は、第1事件及び第2事件の各申立てをいずれも却下する審判をした。Xは、上記審判に対する即時抗告をした。
原審の判断
原審は、以下のとおり、第1事件についての即時抗告を不適法と判断しました。
第1事件の申立てを却下する審判は、第1事件において抗告人が受けられる最も有利な内容であり、抗告人は抗告の利益を有するとはいえないから、即時抗告をすることができず、本件即時抗告のうち上記部分は不適法である。
最高裁の判断
最高裁は、第1事件についての即時抗告を適法と判断しました。
家事事件手続法156条5号は、財産分与の審判及びその申立てを却下する審判に対しては、夫又は妻であった者が即時抗告をすることができるとしている。これは、財産分与の審判及びその申立てを却下する審判に対しては、当該審判の内容等の具体的な事情のいかんにかかわらず、夫又は妻であった者はいずれも当然に抗告の利益を有するものとして、これらの者に即時抗告権を付与したものであると解される。
したがって、財産分与の審判の申立てを却下する審判に対し、夫又は妻であった者である当該申立ての相手方は、即時抗告をすることができるものと解するのが相当である。