残業代請求で問題になることもある事業場外のみなし時間制を取り上げます。
事業場外のみなし時間制
労基法の労働時間規制は、1日8時間・1週間40時間が上限です(労働時間規制と割増賃金参照)。この労働時間は、実労働時間数です。
しかし、労働者が労働時間の全部又は一部を事業場外で業務に従事しているため、実労働時間の算定が困難な場合があります。そのような場合に、所定労働時間、労働したこととみなす制度が事業場外のみなし時間制です(労基法38条の2)。
事業場外のみなし時間制は、取材記者や外回り営業社員など常に事業場外労働を行っている場合や出張などの臨時に事業場外労働することによって、使用者の指揮命令が及ばず、労働時間の把握が困難となることが多いために労働時間の算定を適正なものとするための制度です。
労働時間を算定しがたいとき
事業場外のみなし時間制が適用されるには、「労働時間を算定しがたい」事業場外労働を行ていることが必要です。つまり、①事業場外で労働し、かつ、②使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間を算定することが困難な場合のみ、事業場外のみなし労働時間制の適用があります。
労働時間の算定の困難さは、使用者の具体的な指揮監督・労働時間管理が可能か?によって判断されます。労働時間の管理者が随行している場合、労働者が携帯電話で随時使用者の指示を受けながら労働している場合、訪問先・帰社時刻等について具体的な指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務を行い事業場に戻る場合などは、労働時間の算定が可能なので、事業場外のみなし時間制の適用はありません。
労働時間の一部のみのみなし時間制
事業場外のみなし時間制は、労働時間の全部を事業場外で行う場合だけではなく、一部を事業場外で行う場合も含まれます。
事業場外のみなし労働時間制の効果
事業場外のみなし労働時間制が適用されると、事業場外で行った労働時間については、次のようになります。
所定労働時間だけ労働したこととみなす
実際の労働時間にかかわらず、所定労働時間労働したこととみなされます。この場合、労働者が所定労働時間を超えて労働したことを主張・立証しても、その時間の賃金請求は認められません。
通常必要とされる時間労働したこととみなす
事業場外で行う業務を遂行するのに、通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合には、その業務を遂行するために通常必要とされる時間労働したこととみなされます。事業場の労使協定があれば、労使協定で定めた時間が通常必要とされる労働時間とみなされます。
この場合、労働者が通常必要とされる労働時間を超えて労働したことを主張・立証しても、その時間の賃金請求は認められません。
なお、通常必要とされる労働時間が所定労働時間を超えている場合は、時間外労働になるので、その分の残業代は支払われることになります。