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口頭弁論に関与していない裁判官が判決を調書判決で言渡した場合、原告の請求が全部認容されていても控訴できるか?を判断した最高裁判決


調書判決を口頭弁論に関与していない裁判官が言渡した場合、全部認容判決であっても原告が控訴できるか?を判断した最高裁判決を紹介します。

最高裁令和5年3月24日判決

 口頭弁論に関与していない裁判官が、判決書原本に基づかずに判決を言渡した場合、原告の請求が全部認容されていても控訴できるか?を判断した最高裁判決です。

民事訴訟の判決の言渡し

 民事訴訟の判決は、言渡しによって効力が生じます(民訴法250条)。判決の言渡しは、判決書の原本に基づいて行われるのが原則です(民訴法252条)。

 民事訴訟の判決は、口頭弁論、つまりその裁判の審理に関与した裁判官が行います(民訴法249条1項)。ただし、判決内容に関与していない裁判官が、判決の言渡しをすること自体は、問題ないとされています。

調書判決

 民事訴訟では、被告が答弁書・準備書面といった自分の主張を記載した書面を提出せずに、裁判期日に出席しないことがあります。このように、被告が口頭弁論において原告の主張した事実を争わず、原告の請求を認容する場合は、判決の言渡しを判決原本に基づかずに行うことができます(民訴法254条1項)。

 この場合、判決書は作成されず、調書判決と呼ばれる調書が作成され(民訴法254条2項)、判決書の代わりとなります。調書判決は、めずらしいものではなく、実務上、よく行われます。

上訴の利益

 控訴を含む上訴を行うには、上訴の利益が必要とされています。たとえば、原告が被告に500万円の請求をし、判決が300万円を認めるという場合は、差額の200万円の不服が認められ、上訴の利益があります。

 たとえば、原告が被告に500万円の請求をし、判決が500万円を認めたが、判決の理由に納得いかないという場合は、上訴の利益はありません。

事案の概要

 Xは、Yに対し、遺留分減殺を原因とする不動産の所有権一部移転登記手続を求める訴えを提起した。

 Yは、適式な呼出しを受けたにもかかわらず、第1審の第1回口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しなかった。本件は、第1審において一人の裁判官によって審理されていたところ、同裁判官は、上記期日において口論弁論を終結し、判決言渡期日を指定した。

 上記の指定に係る判決言渡期日において、上記口頭弁論に関与していない裁判官が、民訴法254条1項により、判決書の原本に基づかないでXの請求を全部認容する第1審判決を言い渡した。

 Xは、本件第1審判決には民訴法249条1項に違反する判決手続の違法があり、これは再審事由(同法338条1項1号)にも当たるなどとして、本件第1審判決を取り消し、改めてXの請求を全部認容する旨の判決を求めて控訴をした。

原審の判断

 Xの控訴に対し、原審は、本件第1審判決には上記の判決手続の違法があるものの、Xの請求は全部認容されているから、控訴の利益を認めることができず、本件控訴は不適法であるとして、これを却下した。

最高裁の判断

 最高裁は、以下のように、控訴することができるとして、原審の判断を覆しました。

 第1審において、事件が一人の裁判官により審理された後、判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官が民訴法254条1項により判決書の原本に基づかないで第1審判決を言い渡した場合、その判決手続は同法249条1項に違反するものであり、同判決には民事訴訟の根幹に関わる重大な違法があるというべきである。また、上記の違反は、訴訟記録により直ちに判明する事柄であり、同法338条1項1号に掲げる再審事由に該当するものであるから、上記の第1審判決によって紛争が最終的に解決されるということもできない。

 したがって、上記の場合、全部勝訴した原告であっても、第1審判決に対して控訴をすることができると解するのが相当である。そして、上記の経過によれば、Xは、本件第1審判決に対して控訴をすることができる。


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