民法の債権法改正によって、定型約款について規定されます(民法改正と定型約款参照)。今回は、定型約款の表示と変更を取り上げます。
定型約款の表示
定型約款の内容の表示は、次のように規定されます。
(定型約款の内容の表示)
第五百四十八条の三 定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者は、定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならない。ただし、定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供していたときは、この限りでない。
2 定型約款準備者が定型取引合意の前において前項の請求を拒んだときは、前条の規定は、適用しない。ただし、一時的な通信障害が発生した場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。
定型約款の内容の表示は、相手方から請求があった場合にのみ義務付けられます。定型約款を用いて契約する場合、相手方も定型約款の内容をいちいち確認しない場合が少なくありません。そのため、常に事前に表示しなければならないとすると、かえって煩雑になることと相手方が契約内容を確認できるようにすることとのバランスを取った規定と説明されています。
定型約款の内容の表示と契約の拘束力は切り離されている
以上の規定を前提とすると、定型約款の内容の表示と定型約款の拘束力は、切り離されていることになります。
ただし、定型約款準備者が定型取引の合意前に相手方からの開示請求を拒絶した場合は、定形約款の個別条項についての合意擬制は働かず、定型約款に拘束力が認められません。
定型約款の変更
定型約款の変更について、民法は次のように規定します。
(定型約款の変更)
第五百四十八条の四 定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。
一 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。
二 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。
2 定型約款準備者は、前項の規定による定型約款の変更をするときは、その効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容並びにその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならない。
3 第一項第二号の規定による定型約款の変更は、前項の効力発生時期が到来するまでに同項の規定による周知をしなければ、その効力を生じない。
4 第五百四十八条の二第二項の規定は、第一項の規定による定型約款の変更については、適用しない。
民法は、要件を満たせば、定型約款を変更し、変更後の定型約款の条項について合意したものとみなし、相手方に個別に合意する必要がないようにします。
定型約款の変更の要件
定型約款の変更が認められるのは、以下のいずれかの場合です。
定型約款変更の要件
⑴相手方の一般の利益に適合する
⑵契約の目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無、その内容その他変更に関する事情に照らし合理的である
変更内容の合理性の有無は、改正民法548条の2第2項の合理性よりも厳格なものなので、変更内容の合理性に関しては適用されないと解されています(民法改正と定型約款参照)。変更内容の合理性の有無の判断には、相手方に解除権を与えているかどうか、個別の合意を得ようとすることにどの程度の困難を伴うかといった事情も考慮されると説明されています。