民法改正で、保証契約における保証人の保護が図られます。保証人に対する情報提供を取り上げます。
保証人に対する情報提供義務
民法改正により、債権者の保証人に対する情報提供義務として、以下の2つの規定が新設されます。
保証人に対する情報提供義務
①主たる債務者の履行状況に関する情報提供義務
②主たる債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務
①主たる債務の履行状況に関する情報の提供
(主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務)
第四百五十八条の二 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。
委託を受けた保証人から請求があった場合、債権者は、主たる債務の履行状況に関する情報を提供しなければなりません。この規定は、保証人が個人の場合のみならず、法人の場合にも適用があります。
主たる債務者が債務不履行に陥った後、保証人が長期間そのことを知らずに、請求を受けて初めて遅延損害金が積み重なって多額の債務の履行を強いられることを防止する狙いがあります。
債権者が情報提供義務に違反した場合の効果についての規定はありません。債務不履行の一般法理に従い、損害賠償や保証契約の解除が想定されているとされています。
②主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報提供
保証人が個人である場合は、主たる債務者が期限の利益を喪失した際に、債権者の情報提供義務があります。
(主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務)
第四百五十八条の三 主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から二箇月以内に、その旨を通知しなければならない。
2 前項の期間内に同項の通知をしなかったときは、債権者は、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から同項の通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができない。
3 前二項の規定は、保証人が法人である場合には、適用しない。
債権者が保証人に対して主たる債務者が期限の利益を喪失したことの通知を怠ったときは、債権者は、保証人に対し主たる債務者が期限の利益を喪失した時からそのことを通知した時までに生じた遅延損害金に対応する部分について、保証債務の履行を請求できません。
債権者が通知を怠ったからといって、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失したことを主張できないというわけではありません。主たる債務者が期限の利益を喪失した場合は、保証人も期限の利益を主張することはできません。