民法の債権法改正によって、敷金が明文で規定されます。
現行民法における敷金
現行民法では、敷金について明文の規定はありません。判例により、敷金は次のように取扱われています。
敷金の意義
賃貸借契約締結時に、賃借人が賃貸人に対して交付する金銭で、賃借人が賃貸人に対して、賃貸借契約終了後明渡しまでに負う賃料・損害金を担保するものです。賃貸人は、賃借人の債務額を控除して残額を賃借人に返還する義務を負います。
敷金の効力
賃貸借契約存続中、賃貸人は賃借人が支払を怠った賃料を敷金から控除することができます。相殺と異なり、敷金から控除する際に意思表示は必要ないと解されています。
もっとも、賃貸人には、敷金から未払賃料を控除する義務はありません。したがって、賃貸人は、賃借人に対して、未払賃料及び遅延損害金を請求することができます。この場合、請求を受けた賃借人は、敷金から控除することを主張することはできません。
敷金の金額よりも賃借人の債務額が大きい場合、法定充当により、当然充当されます。
敷金の返還時期
賃貸借契約終了後明渡完了時に、それまで生じた被担保債権を控除した残額について敷金返還請求権が具体的に発生するというのが判例の立場です。
改正民法における敷金
改正民法では、敷金について明文で規定されることになりました。
第四款 敷金
第六百二十二条の二 賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
2 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
敷金について改正民法で明文規定が設けられましたが、まったく新しいルールを作ったのではなく、従前の判例をそのまま条文にしました。