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処分禁止の仮処分に関する最高裁決定


処分禁止の仮処分に関する最高裁決定を紹介します。

最高裁令和5年10月6日決定

 土地の一部について、所有権移転登記請求権を有する債権者が、土地全部について処分禁止の仮処分命令が、認められるか?が問題になった事案です。

事案の概要

 抗告人が、いずれも1筆である原々決定別紙物件目録Ⅰ記載の各土地について、その各一部分の所有権を時効により取得したなどと主張して、本件各土地の所有権の登記名義人である相手方らに対し、当該各一部分についての所有権移転登記請求権を被保全権利として本件各土地の全部について処分禁止の仮処分命令の申立て等をした。

原審の判断

 原審は、土地全部について処分禁止の仮処分命令を認めませんでした。

 1筆の土地の一部分についての所有権移転登記請求権を有する債権者は、当該一部分についての処分禁止の仮処分命令を得た場合、債務者に代位して分筆の登記の申請を行い、これにより分筆の登記がされた当該一部分について処分禁止の登記がされることによって、当該登記請求権を保全することができるから、当該登記請求権を被保全権利とする当該土地の全部についての処分禁止の仮処分命令は、保全の必要性があるとはいえない。

最高裁の判断

 最高裁は、例外的に、土地全部について処分禁止の仮処分命令が認められる場合があると判断しました。

 1筆の土地の一部分についての所有権移転登記請求権を保全するためには、当該一部分について処分禁止の登記をする方法により仮処分の執行がされることで足りるから、当該登記請求権を被保全権利とする当該土地の全部についての処分禁止の仮処分命令は、原則として当該一部分を超える部分については保全の必要性を欠くものと解される。

 もっとも、上記一部分について処分禁止の登記がされるためには、その前提として当該一部分について分筆の登記がされる必要があるところ、上記登記請求権を有する債権者において当該分筆の登記の申請をすることができるか否かは、当該債権者が民事保全手続における密行性や迅速性を損なうことなく不動産登記に関する法令の規定等に従い当該申請に必要な事項としての情報を提供することの障害となる客観的事情があるか否かに左右されるから、当該債権者において当該申請をすることができない又は著しく困難である場合があることも否定できないというべきである。そして、その場合、上記債権者は、上記一部分について処分禁止の仮処分命令を得たとしても上記登記請求権を保全することができないから、当該登記請求権を保全するためには上記土地の全部について処分禁止の仮処分命令を申し立てるほかないというべきである。上記の申立てにより仮処分命令がされると、債務者は上記一部分を超えて上記土地についての権利行使を制約されることになるが、その不利益の内容や程度は当該申立てについての決定に当たって別途考慮され、当該債務者において当該権利行使を過度に制約されないと認められるだけの事情がない場合には当該申立ては却下されるべきものと解される。

 以上によれば、上記債権者が上記登記請求権を被保全権利として上記土地の全部について処分禁止の仮処分命令の申立てをした場合に、当該債権者において上記分筆の登記の申請をすることができない又は著しく困難であるなどの特段の事情が認められるときは、当該仮処分命令は、当該土地の全部についてのものであることをもって直ちに保全の必要性を欠くものではないと解するのが相当である。


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