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損害賠償における損益相殺と過失相殺の先後を判断した最高裁判決


損害賠償額の算定の際に、損益相殺と過失相殺のどちらを先に行うのか?を判断した最高裁判決を紹介します。

 Yの従業員の重過失による出火により、Xが所有する粗大ごみ処理施設が焼損しました。

 粗大ごみの処理ができなくなったことから、Xは本件処理施設を解体して、代替的方法で粗大ごみ処理を行ったため、代替処理費を支出しました。その一方で、Xは粗大ごみ処理のための運転管理費の支出を免れました。

 XはYに対して、本件施設の解体費用と代替処理費用を損害として賠償請求しました。

争点

 本判決の争点は、以下の2つです。

本判決の争点

  • 本件施設の解体費用が、損害に当たるか?
  • Xの過失割合による減額(過失相殺)と支出を免れた運転管理費の損益相殺の先後

事案の概要

 本件クリーンセンターは、粗大ごみの分別処理や破砕処理を行う本件施設及びごみ焼却施設棟等から構成されており、Xが所有していた。Xは、Yに対し、本件クリーンセンターに係る運転、保安等の業務を委託していた。

 Yは、平成27年10月、Xから本件施設内のコンベア下の金属板の亀裂部分について補修依頼を受け、従業員を当該部分の溶接作業に当たらせたところ、同人の重過失により出火した。本件火災事故により、本件施設の2階から4階部分に設置されていた上記コンベアから複数のコンベアに燃え広がり、本件施設は、屋根と壁の一部まで焼損するなどした。本件火災事故による本件施設(延べ床面積4,253.81平方メートル)の焼損又は水損の範囲は、焼損した面積が1,280平方メートル、水損した面積が931平方メートルに及んだ。本件火災事故におけるXの過失割合は3割である。

 Xは、本件火災事故により粗大ごみの処理を行うことができなくなった本件施設を修繕不能として解体した。本件施設は、鉄骨造及び鉄筋コンクリート造で、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)上の耐用年数が38年の建物であり、本件火災事故当時、竣工から約18年が経過していた。

 Xは、本件火災事故後、第三者に業務委託し仮設破砕機を用いるなどして従前本件施設で行っていた粗大ごみの処理を行うようになり、令和3年3月までの間に、当該処理のための費用として消耗品費、仮設破砕機賃借料及び委託料等合計5億1,451万円余の本件代替処理費を支出した。

 Xは、本件火災事故前、本件施設における粗大ごみの処理のために消耗品費、修繕料及び委託料等の費用を支出していた。本件火災事故後、令和3年3月までの間に支出を免れた本件運転管理費の合計は3億9,278万円余である。

原審の判断

 原審は、以下のように判断しました。

原審の判断

  • 本件解体費用を損害として認めない。
  • 過失相殺による減額をした後に、本件運転管理費の損益相殺を行う。

最高裁の判断

 最高裁は、原審の判断をいずれも覆しました。

最高裁の結論

  • 本件解体費用を損害として認める。
  • 本件運転管理費の損益相殺を行った後に、過失相殺を行う。

 本件施設は、本件火災事故により火元から複数のコンベアに燃え広がり、広い範囲にわたり焼損又は水損したものであるから、修繕することが不可能又は著しく困難な状態となったということができる。

 そして、本件施設の耐用年数や本件火災事故当時の経過年数、本件火災事故発生前の稼働状況等に照らすと、本件火災事故が発生しなければ、本件施設は相当長期間にわたって粗大ごみの処理を行う施設として使用される蓋然性が高かったということができるのであって、Xにおいて、本件施設を近い将来に解体する予定があったといった事情は見当たらない。そうすると、本件施設が将来のいずれかの時点において解体されるからといって、直ちに、本件解体費用の全部について、本件火災事故との相当因果関係が否定されることにはならないというべきである。

 したがって、本件解体費用について、本件火災事故と相当因果関係のある損害ということはできないとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法がある。

 本件施設の用途や性質等に照らすと、Xは、本件施設に代わる新たな施設を取得するまでの合理的な期間については、不法行為に基づく損害賠償として、代替的な手段を用いて粗大ごみを処理するのに要した費用相当額の賠償を求めることができるというべきである。前記事実関係等によれば、Xは、本件火災事故後、本件施設において粗大ごみの処理ができなくなったことにより、本件火災事故発生から令和3年3月までの間、本件施設に代えて仮設破砕機を用いるなどして粗大ごみの処理を行い、本件代替処理費を支出することを余儀なくされた一方で、従前、本件施設で粗大ごみを処理するために要していた本件運転管理費の支出を免れたものである。本件代替処理費と本件運転管理費は、いずれも本件火災事故発生前に本件施設が担っていた粗大ごみの処理を行うために要する費用として同質性があり、Xは、本件火災事故によって本件代替処理費の支出に係る損害を被ると共に本件運転管理費の支出を免れるという利益を受けた関係にある。そうすると、上記不法行為に基づき賠償すべき額を定めるに当たっては、公平の観点から、損益相殺として、本件代替処理費相当額から本件運転管理費の支出を免れたことによる利益を控除すべきであり、控除後の残額が上記不法行為によって粗大ごみの処理についてXが現実に被った損害となるのであるから、上記利益の控除は、過失割合による減額に先行して行うのが相当である。

 したがって、本件施設が使用できなくなったため代替的な手段を用いて粗大ごみを処理した場合に、Yが不法行為に基づきXに対して賠償すべき額を定めるに当たっては、本件代替処理費相当額から本件運転管理費相当額を控除した後に、過失割合による減額をすべきである。


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