為替損益が雑所得に当たるか?を判断した最高裁判決を紹介します。
最高裁令和8年6月16日判決
外国通貨によって他の種類の外国通貨や外国通貨建ての有価証券を取得する取引が行われたことによる為替差損益が所得税法の雑所得に当たるか?が問題になった事案です。
外貨建て商品と税金
外貨建て商品の課税関係は、商品の種類によって異なります。
たとえば、外貨預金の場合、日本円の預金と同様、利息は利子所得として課税されます。外貨預金を円転した際の為替損益は、雑所得として課税されます。
外国株式の場合は、配当金は配当所得として課税されます。外国株式を売却した際の利益は譲渡所得として課税されます。為替損益は譲渡所得に含まれています。
ドルでドル建ての株式を買った場合の課税関係
この最高裁判決では、もともと保有していた外国通貨で外国通貨建ての有価証券等を購入した場合の課税関係が問題になりました。
上記の具体例の課税関係は、以下のようになります。
5万円について雑所得として課税するというのが、最高裁の結論です。

②の時点で、外貨預金を解約(円転)したのと同じように扱うわけです。
事案の概要
Xは、平成26年5月27日、スイス連邦に本店を置く本件外国金融機関のX名義の預金口座に合計105億円を送金し、同年7月18日、本件外国金融機関にその運用を一任した。
本件外国金融機関は、平成26年7月から平成27年12月までの間、上記運用の一環として、運用対象資産に属する外国通貨によって他の種類の外国通貨や外国通貨建ての有価証券を取得する本件各取引を行った。
Xは、本件各取引から所得が生じないことを前提に、平成26年分及び平成27年分の所得税等の各確定申告をした。これに対し、渋谷税務署長は、本件各取引により為替差損益に係る雑所得が生じているなどとして、平成30年9月26日付けで、上記各年分の所得税等の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
Xが上記各処分を不服として再調査の請求をしたところ、東京国税局長は、令和元年6月10日付けで、平成26年分の所得税等の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分に係る再調査の請求を棄却し、平成27年分の所得税等の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分の各一部を取り消す旨の決定をした。
Xの主張
外国通貨により他の種類の外国通貨又は同一の外国通貨建ての有価証券を取得する取引が行われても、為替変動のリスクが依然として存在し、為替差益は確定しないから、本件各取引に係る為替差益に課税することは、未確定、未実現の利益に課税するものとして許されない。
最高裁の判断
最高裁は、為替差損益が所得税法の雑所得に当たる、つまり課税されると判断しました。
所得税法は、所得を外部からの経済的価値の流入という収入の形態で捉え、原則として、収入の形態で実現した利得のみを課税の対象とするとともに(36条1項参照)、収入の原因となる権利が確定した場合には、その時点で所得の実現があったものとして、同権利確定の時期の属する年分の課税所得を計算するという建前を採用しているものと解される。
そして、所得税法は、各種所得の計算に当たって控除される各種控除額を全て本邦通貨の額面価格の単位である円で表示し(21条1項、28条3項、32条4項、33条4項、34条3項等)、外貨建取引を行った場合には、当該外貨建取引の金額の円換算額は当該外貨建取引を行った時における外国為替の売買相場により換算した金額として、各種所得の金額を計算すべき旨を定める(57条の3第1項)など、所得金額及び所得税額の計算について本邦通貨の額面価格の単位を基準に行うことを当然の前提としている。そうすると、所得税法は、所得の把握についても本邦通貨の額面価格の単位を基準に行うことを予定しているものというべきである。このことは、所得税を含む国税に関し、その課税標準や確定金額の端数計算について端数が円で表示されていること(国税通則法118条、119条)や、原則として金銭により納付しなければならないものとされており(同法34条1項本文)、我が国において強制通用力を有する本邦通貨による納付が求められていると解されることとも整合的である。
以上を踏まえると、ある外国通貨により他の種類の外国通貨又は同一の外国通貨建ての有価証券を取得する取引が行われた場合、変動する外国為替の売買相場の下で本邦通貨との関係において変動していたある外国通貨の経済的価値が、上記取引により他の種類の外国通貨又は有価証券の経済的価値をもって固定化され、他の種類の外国通貨又は有価証券の経済的価値が流入することによって、ある外国通貨の取得時の経済的価値を上回る部分が実現した利得となるとともに、上記取引時に他の種類の外国通貨又は上記有価証券に係る権利が収入の原因となる権利として確定することから、その時点における他の種類の外国通貨の金額又は有価証券の価額の円換算額(所得税法57条の3第1項参照)を同法36条1項にいう「収入すべき金額」とすべきこととなる。
居住者が、外国通貨により他の種類の外国通貨又は同一の外国通貨建ての有価証券を取得する取引を行った場合、上記取引を行った日の属する年分の所得の金額の計算上、上記取引時における他の種類の外国通貨の金額又は有価証券の価額の円換算額が「収入すべき金額」となると解するのが相当である。そして、上記円換算額から支払に用いた外国通貨を得るのに要した金額等を控除した金額が、上記取引に係る所得の金額となるというべきである。
