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給与ファクタリングが貸金業法・出資法の「貸付け」に該当すると判断した最高裁決定


給与ファクタリングを貸金業法・出資法の「貸付け」だと判断した最高裁決定を紹介します。

最高裁令和5年2月20日決定

 給与ファクタリングが、貸金業法及び出資法の「貸付け」に当たると判断した最高裁決定です。給与ファクタリングが、貸金業法及び出資法の貸付けに該当するということは、これらの法律の適用を受けることになります。

 給与ファクタリングは、会社員が賃金債権(給与)をファクタリング業者に譲渡することで、給与日前に、資金を得ることができるというものです。

 通常のファクタリング・債権譲渡の場合、債権の譲受人は、対抗要件を具備することで、債務者に対して、債務の支払いを求めることができます(民法467条)。

 しかし、賃金債権は、労基法24条1項により、使用者が労働者に直接支払うことを義務付けています。そのため、債権譲渡が行われても、会社は会社員に給与を支払います。したがって、ファクタリング業者は、会社員から取立てることになります。このように、給与ファクタリングは、貸付と同様の構造になっています。また、年利換算すると数百%などといった高額の手数料を支払わされるといった問題が生じています。

事案の概要

 東京都内に事務所を設け、株式会社Aの名称で、「給料ファクタリング」と称する取引を行っていた被告人が、都知事の登録を受けずに、①業として、令和2年3月13日から同年7月27日までの間、969回にわたり、合計504名の顧客に対し、口座に振込送金する方法により、貸付名目額合計2,790万9,500円(実交付額合計2,734万2,120円)を貸し付け、もって登録を受けないで貸金業を営んだという貸金業法違反(同法47条2号、11条1項、3条1項)、②業として金銭の貸付けを行うに当たり、同年3月31日から同年8月4日までの間、33回にわたり、上記株式会社A名義の普通預金口座に振込送金で受け取る方法により、上記顧客のうち8名から、法定の1日当たり0.3パーセントの割合による利息合計11万8,074円を101万7,816円超える合計113万5,890円の利息を受領したという出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律違反(同法5条3項後段)を問われた事案です。

取引の内容

 被告人が、「給料ファクタリング」と称して、顧客との間で行っていた取引は、被告人が、労働者である顧客から、その使用者に対する賃金債権の一部を、額面額から4割程度割り引いた額で譲り受け、同額の金銭を顧客に交付するというものであった。本件取引では、契約上、使用者の不払の危険は被告人が負担するとされていたが、希望する顧客は譲渡した賃金債権を買戻し日に額面額で買い戻すことができること、被告人が、使用者に対する債権譲渡通知の委任を受けてその内容と時期を決定すること、顧客が買戻しを希望しない場合には使用者に債権譲渡通知をするが、顧客が希望する場合には買戻し日まで債権譲渡通知を留保することが定められていた。そして、全ての顧客との間で、買戻し日が定められ、債権譲渡通知が留保されていた。

最高裁の判断

 最高裁は、上記のような給与ファクタリングは、貸金業法・出資法の「貸付け」に当たると判断しました。

 本件取引で譲渡されたのは賃金債権であるところ、労働基準法24条1項の趣旨に徴すれば、労働者が賃金の支払を受ける前に賃金債権を他に譲渡した場合においても、その支払についてはなお同項が適用され、使用者は直接労働者に対して賃金を支払わなければならず、その賃金債権の譲受人は、自ら使用者に対してその支払を求めることは許されないことから、被告人は、実際には、債権を買い戻させることなどにより顧客から資金を回収するほかなかったものと認められる。

 また、顧客は、賃金債権の譲渡を使用者に知られることのないよう、債権譲渡通知の留保を希望していたものであり、使用者に対する債権譲渡通知を避けるため、事実上、自ら債権を買い戻さざるを得なかったものと認められる。

 そうすると、本件取引に基づく金銭の交付は、それが、形式的には、債権譲渡の対価としてされたものであり、また、使用者の不払の危険は被告人が負担するとされていたとしても、実質的には、被告人と顧客の二者間における、返済合意がある金銭の交付と同様の機能を有するものと認められる。

 このような事情の下では、本件取引に基づく金銭の交付は、貸金業法2条1項と出資法5条3項にいう「貸付け」に当たる。


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